空き家(中古物件)の失敗しない選び方
2015年の「 空き家対策特別措置法 」の施行で、空き家所有者に対して空き家の管理が求められるようになったことにより、使う予定のない空き家の管理費用をかけ続けるよりはと、空き家を売りに出されるケースが増えています。
空き家を購入したいと考えている方にとっては大きなチャンスである一方、空き家選びは慎重に行わなければなりません。
ここでは、空き家を購入するときの、失敗しない選び方について書いていきたいと思います。
空き家を購入するにあたり最もしてはならないことは、情報収集が十分でないうちに、なんとなく雰囲気や見た目がいいから、といった不確かな動機で購入を決めてしまうことです。
外観からだけで判断できることには限りがあり、むしろ見えていない部分にこそ瑕疵やトラブルの元が潜んでいるものです。
そのため、空き家の購入においては、情報収集が最も重要なことであるといえます。
空き家が地方か、都市部か
都市部から地方に移住するのであれば、環境は大きく変わることになります。
土地が広く、自然が豊かで空気も美味しい、といったメリットだけでなく、周りにお店や病院などの施設が少なかったり、夜は極端に暗くなったりといった、都市部では感じることのないデメリットもあります。
また、現地の習慣や風習、近隣住民との付き合い方も都市部とは大きく異なる可能性があるため、できるだけ事前に把握しておく必要があります。
空き家の探し方
ウェブサイトで探す
大手の不動産サイトなどインターネットで検索して探す方法です。条件をつけて絞り込み検索をすることができて、写真や動画などを公開しており、間取りや敷地面積、築年数など多くの情報を載せてくれていることが多いため、最初の取り掛かりに適しています。
不動産会社を仲介に入れると手数料が発生しますが、売り主との仲介を最後まで担ってくれるため、余計なトラブルを避けられるメリットもあります。
空き家バンクを使う
各自治体が、不動産の賃貸や売却をしたいという所有者からの情報をとりまとめて、空き家に住みたい、購入したいという利用希望者に紹介するサービスを空き家バンクといいます。不動産会社のウェブサイトに掲載されていない物件情報もあります。
一般的には自治体の空き家バンクのウェブサイトから空き家の利用希望の登録を行い、内見をしたのち気に入れば購入、という流れになります。
空き家所有者と買い主が直接やり取りをするため、不動産会社の手数料が発生しないことがメリットとなります。
自治体による移住者支援制度
空き家バンクを活用することで、自治体による移住者支援制度を受けられることもあります。支援の内容にはリフォームの費用を一部負担してくれるものもあるので、活用できそうな支援をあらかじめ調べておくとよいでしょう。
冒頭にも書いてあるように、情報収集が最も大切です。可能な限り情報を集めたいところですが、おおよそどのようなポイントを押さえておくのがよいでしょうか。
空き家となっている原因
物件がなぜ空き家になっているのか、理由は様々ありますが、その内容によっては住み始めてからトラブルを引き起こすことがあります。
大きな問題がないとされている理由の主なものは、所有者が相続で遊休地を引き継いだ場合や、所有者の死亡や転職・転勤によって使われなくなった、などです。
建物内で事件があったり、近隣住民に変わった人がいてトラブルから逃れるために物件を手放していたりといった理由があれば、そこでの生活に支障が出る可能性があります。事件や事故があった物件は売主による告知義務がありますが、そこを隠して売りに出す人もいるので積極的に調べましょう。
建物が現在の建築基準法から逸脱してしまったために売りに出されている場合もあります。その場合は建築基準法に合うようにリフォームや建て替えをすることで住むことが可能になるものもあります。
土地について
立地・周辺の環境
日当たりが悪くないか、風通しが悪く湿気がこもっていないか、周りにスーパーや病院などの施設が整っているか、周辺の昼と夜の雰囲気や治安は安定しているかなどを調べておきたいところです。
敷地境界の確認
空き家は土地も一緒に売りに出されていることがほとんどですが、隣の敷地との境界線をはっきりさせておくことも必要です。隣との境界に塀があったとして、その塀がどちらのものなのか、隣の住人が長く住んでいても分からない場合があるため、境界があいまいな場合は「土地家屋調査士」に依頼して、隣人と共に確認できるようにしましょう。
土地に抵当権が残っていないか
前の所有者がその土地や建物に抵当権を設定している場合があります。抵当権をそのままにしておくと、購入後に突然競売に出されてしまう可能性があるため、登記簿謄本で確認し、必ず抵当権は抹消してもらいましょう。
建物について
耐震性のチェック
1981年以前に建てられた家と現在の家では適用されている建築基準法が異なるため、古い建物の構造や地盤の調査がなされているかを確認しておきたいところです。耐震性が低い場合もありますので、建物の「建築確認済証」の発行日を確認しましょう。発行日が1981年6月1日以降であれば、現在の耐震基準に沿った建物である証明になります。
また、古い建物でも、途中で耐震補強工事を行っている場合もありますので、補修工事の履歴も確認しましょう。
空き家状態でもきちんとメンテナンスをされていたか
空き家対策特別措置法により、空き家であっても所有者がメンテナンスを行う義務を負うことになりましたが、それでもきちんとしたメンテナンスを行われていなかったり、不十分であったりする場合があります。メンテナンスが十分であったかどうかで後々の補修工事の程度や費用に差が出てくることになります。
長期間、人の出入りやメンテナンスが行われていない空き家は、不法侵入者がいたり、たまり場になっていたりして治安が悪くなっているケースもあります。
床下・屋根裏の劣化度合いはどうか
ぱっと見ではわからないけれど、見えない場所にこそトラブルの元は潜んでいます。
よくある事例としては、住んでから雨漏りに気が付いた、床下で漏水があって建材や基礎を腐食させていた、といったことがあります。
内見の段階で床下収納から覗いたり、畳を上げてその下を確認したり、天井の染みの有無や屋根裏が濡れていたりカビ臭かったりしないかなど、必ずチェックしましょう。
内見時の天候は気持ちの良い晴れた日より、環境の悪い状態の家を確認することができる雨の日に内見するのがおすすめです。
シロアリの被害に遭っていないか
アリの羽が落ちている、床が柔らかくなっている、柱をコンコンとノックすると空洞を感じる場合などはシロアリの被害に遭っている可能性が高いです。被害が軽いうちは補強工事で済みますが、ひどい場合には建て替えを余儀なくされる場合もあります。
水まわり、電気容量や配線のチェック
水まわりの配管はそのまま使用することができるのか、漏れや結露がないかなども確認しておきたいところです。水漏れがあれば、配管の交換工事が必要です。
また、使用電力のアンペア数も確認しましょう。現在は昔の家よりも電化製品を使う機会が多くなっています。古い電力環境だとすぐにブレーカーが落ちたり、コンセントが少ない場合があるため、アンペア数を上げたり、コンセントを増やす配線工事をする必要がでてきます。
再建築が可能か
現在の建築基準法では、幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していない物件は、再建築不可物件となります。
もともと立て直しを計画していた時や建物の劣化が激しく建て直しをするに至った時でも、再建築不可物件の状況のままでは建て直しをすることができません。建築基準法の条件を満たす位置まで敷地を下げて(道路を広げるか接する面を増やす)建て直すことで可能になる場合もありますが、下げた分建物の広さは損なわれてしまいます。
そもそも、空き家になった原因が「建物の老朽化のため建て直しをしようとしたが再建築不可物件であった」というケースもあります。
建て直しを想定して空き家を購入する場合には、再建築が可能かどうかを役所の窓口で調べておく必要があります。
リフォーム済み物件は、瑕疵が隠蔽されている可能性もある
空き家には「リフォーム済み」として販売されているものも多くあります。
その家の抱える問題にきちんと向き合った信頼できるリフォームであった場合には、そのままトラブルなく住み始めることができる可能性がありますが、そのリフォームが外見の良さなど表面を取り繕うだけのもので、内部の深刻な劣化を覆い隠すためのもの(あるいは所有者が気づかずに行っている場合も)であった場合、購入後に改めて補修工事を行う必要があります。
リフォーム済み物件は、販売価格にリフォームの費用が上乗せされているため、リフォームしていない物件よりも割高で販売されています。そのうえで購入後に結局リフォームする羽目になると、余計なリフォームの分、負担額が大きくなります。
専門家による住宅診断
空き家を選ぶにあたって、注意点は非常に多いです。
一軒の住宅を隅々まで見る必要がありますが、一般の方が建物を総合的に判断することは難しいので、専門家に住宅診断を依頼するのがよいでしょう。
リフォーム費用を含めた資金計画
リフォームをせずに引き渡された状態そのままで住むこと自体あまりないケースで、多くの場合あらかじめリフォームすることを想定して空き家を購入することになります。
購入からリフォームまでは調べることも多く、不確定要素も多いですが、より購入計画の精度を高めるには、購入前に建物の現況をよく把握し、どこをどうリフォームするのかまで考えておく必要があります。
また、工事が始まってから思わぬところで劣化が進んでいるのが発覚して追加の補修工事をするということもあるため、不測の事態に対応できる資金も用意しておくことが必要です。
古民家リフォームに関する記事もありますので、こちらもご活用ください。
まとめ
空き家購入では、情報の多さ、計画の綿密さが失敗しないための柱になります。専門家に任せた方がいい部分もありますが、決して他人任せにはせず、調査を依頼したときにも、あくまで調査結果は自分で理解しておかなければなりません。
それだけに、空き家購入で得られるメリットも多く存在していますので、ひとつひとつ着実に購入計画を進めていきましょう。