令和5年度「 住宅エコリフォーム推進事業 」
2030年のカーボンニュートラルの大きな目標に向けて、省エネ住宅へのリフォームに対する補助金事業が令和5年になってリニューアルされました。そこで補助を受けるための要件や具体的な内容を掘り下げていきます。
事業目的
国内の脱炭素化に向けて、電力などのエネルギーの消費効率が良い住宅にリフォームする(省エネ化)などの取り組みに対して、国がリフォーム費用を一部補助金という形で支援することで、省エネ住宅の数を増やしていくことを目的としています。
補助の対象となるもの
省エネ診断
省エネ性能を評価するために第三者機関に依頼したときにかかる証明書の取得費用などが補助の対象となります。
省エネ設計
省エネ改修を行うための調査・設計等にかかる費用が対象となります。
なお、省エネ設計のみでの補助金申請はできません。
省エネ改修工事
建て替えを含む家全体の省エネ化リフォーム、もしくは部分的に省エネ化するためのリフォーム工事が対象です。
また、省エネ改修工事と併せて実施される耐震補強工事も含まれます。実体的に行われる工事としては、この2種類となります。省エネ改修工事は、全体改修工事と部分改修工事に分けられ、対象となる工事の条件や補助金額の算定方法が異なります。
なお、既存住宅のみが対象となり、新築や注文住宅の建築は対象外となります。また「こどもエコ住まい支援事業」のように、子育て世帯といった世帯の制限は設けられておらず、全世帯が同じ条件で補助の対象となります。
補助の対象となる条件
省エネ診断は、それのみでも申請可能
省エネ設計・省エネ改修と併せて申請することもできます。
工事の結果、ZEH仕様基準を満たすこと
ZEHとは、ネット・ゼロ・エナジー・ハウスの略で、住宅で使用する電気やガスなどのエネルギーと住宅で生み出すエネルギーとの差を無くすか、生み出すエネルギーの方が上回るような住宅のことです。消費する電気やガスなどが少なくなるほど効率が良くなり、ZEH仕様基準に近づいていく、ということになります。
ZEH仕様基準とは、窓やドアなどの外に近い部分(開口部)の熱の出入りの効率や、断熱材の素材などを細かく分類し、省エネ効率を等級で分けた基準となります。
補助金を受けるためのZEH基準は、断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6となるもので、第三者評価の認証を取得する必要があります。
工事後の建物が現在の建築基準法の耐震性能を満たすこと
住宅性能表示における耐震等級3に適合するか、構造計算により構造安定性が確認できる、もしくは国土交通省による壁量基準に適合する、そのうちのいずれかに適合している必要があります。
補助の対象となる条件を満たすZEH仕様基準や耐震性能基準は非常に複雑で専門的です。
全体改修や建て替えにおいてはBELSなど専門の第三者機関による評価の認証が必要で、その費用も補助の対象となります。
対象となる期間
補助金を受けるための大まかな流れは、
①工事請負契約
②補助金交付申請
③工事着手、診断の実施
④交付決定
⑤工事完了実績報告
⑥交付額の決定および補助金の交付
となります。
定められている期限は、
●省エネ診断・省エネ設計に関しては、補助金交付申請まで(②まで)に契約がされていて、完了報告期限まで(⑤まで)に業務が完了していることが必要です。
●改修工事は、令和5年4月1日以降の工事請負契約で、事業者登録後かつ令和6年度末までに工事に着手することとされています。
●補助金の交付申請受付期間は、令和6年1月19日までの予定です。
●完了実績報告書の提出は、工事完了・引き渡し後1ヵ月以内で、令和6年2月29日までの予定となっています。
●交付額の決定は、完了実績報告提出後になされ、補助金の交付はもちろんその後になります。
というように、手続きの受付期限が定められていますが、住宅エコリフォーム推進事業の予算の上限に達したら終了となるため、期限を待たずに終了してしまう可能性があるので注意が必要です。
工事業者および補助金受給者
登録事業者が申請実務を行い、補助金の受け取りは工事発注者であるお客様となります。
なおTOTOリモデルサービスは、登録事業者の予定(申請中)となっています。
補助金額
●省エネ診断は、民間が診断を行う場合は費用の3分の1が補助金額となり、公共機関が診断を行う場合は費用の2分の1が補助金額となります。工事を行わず診断のみを行う場合の最低補助金額は1万円です。
●省エネ設計等、省エネ改修工事は、工事費の40%を補助率としてあります。最低補助金額は5万円で、補助限度額は一戸当たり35万円までとされています。工事費の40%と限度額の35万円の、低い方が補助額となります。なお、補助金額が5万円を下回る工事は、補助の対象外となります。
では、工事費の40%が35万円になる、875,000円以上の工事であればいいのかというと、そう単純な話でもありません。
部分改修においては、工事の内容を個別に分類し、それぞれに補助金を算出することになっていますので、そのルールに則った結果、35万円が上限金額ということになります。
●部分改修は工事費の算出に、「モデル工事費」というものが関係してきます。モデル工事費とは、部分改修工事の部位やその面積、断熱材の熱伝導率、導入する高効率設備などによってあらかじめ住宅エコリフォーム推進事業の事務局が工事費の目安を示している金額です。
部分改修では窓やドアなど複数の開口部の断熱改修工事(必須工事)、屋根や壁など躯体の断熱改修工事、高効率設備の工事費に補助率を掛けた額と、それぞれに定められているモデル工事費に補助率を掛けた額のうち低い方の合計と、限度額の35万円のうち低い方を補助額とすることとなっています。
また、設備の効率化工事の工事費は、開口部・躯体工事の工事費と同額以下となります。
対象となるリフォーム内容
全体改修および建て替え
全体改修は工事後の住宅の断熱等性能等級が5で、かつ一次エネルギー消費量等級6となるもので、第三者評価の認証を取得する必要があります。また、再生可能エネルギーの導入は要件とされていません。
建て替えの場合も同様ですが、建て替えであることを証明できる書類の提出が必要です。
部分改修
●必須工事(複数の開口部においてZEH仕様基準を満たすように改修する工事)
●必須工事と併せて実施することで対象となる工事
1.ZEH仕様を満たす躯体の断熱改修工事
2.設備の高効率化工事
・太陽熱利用システム
・電気ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯器(ハイブリッド給湯器)
・ヒートポンプ給湯器(エコキュート)
・潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)
・燃料電池システム(エネファーム)
・高断熱浴槽
・浴室シャワーの節湯水栓
・蓄電池
・LED照明
画像引用:国土交通省「令和5年度住宅エコリフォーム推進事業について」
部分改修工事は、その部分ごとにZEH仕様基準に適合する必要がありますが、設備の高効率化工事においてはそのほとんどが2023住宅省エネキャンペーンで型番登録されている建材や設備を導入することで補助対象となります。LED照明は工事を伴うことが必要で、型番登録された製品を使う必要はありません。
ハイブリッド給湯器・エネファームを導入する場合は、浴室シャワー水栓か高断熱浴槽との2点セットの組み合わせをすることで対象となります。
エコキュート・エコフィール・エコジョーズのいずれかを導入する場合は、3つのうちのいずれかと浴室シャワー節湯水栓、高断熱浴槽との3点セットが要件となります。
なお、以上のようなセットで対象となる高効率設備は、一部既設のものを使用しても構いません。
具体的なリフォーム工事における補助額の例
部分改修における対象工事とそのモデル工事費をもとに補助額を算出した例です。
必須工事を「 内窓設置(大)」・「 内窓設置(小)」
設備の高効率化工事を「 高断熱浴槽の設置 」・「 浴室シャワー節湯水栓の設置 」・「 エコキュートの設置 」
とした場合、高効率設備のモデル工事費が必須工事である窓の工事費を上回ってしまっているため、窓の工事費と同額に合わせられます。そのため、必須工事の補助額163,200円と高効率設備の補助額163,200円の合計である326,400円が補助金額となります。
ちなみにこの場合、例えばエコキュートが既に取り付けられていた(既設)場合でも、補助を受ける要件は満たされており、また結果として補助金額は変わりません。
補助事業の予算が優先的に配分されるグループ
地域の関係団体や事業者が連携して、住宅の省エネ改修の普及促進に積極的に取り組み、省エネ改修を実施するグループであって、活動計画や交付申請予定などを提出し採択されたグループについては、予算の優先配分を行うとされています。
つまり、住宅エコリフォーム推進事業の事務局にグループとして申請したうえで、その資格ありと認められている団体には、補助金の予算が優先的に配分されていき、当初の想定よりも早く予算上限を迎えて、予定されている期日よりも前に補助事業が完了してしまう可能性がある、ということです。
予算の進行状況は、住宅エコリフォーム推進事業実施支援室のホームページで閲覧することができます。
前年度の同事業との比較
令和4年度の事業と比べると、補助金上限額は15万円ほど下がったものの、工事費に対する補助率が戸建てで11.5%(マンションは16.7%)から40%へと大きく上昇しています。
つまり、比較的小さな工事でも対象となりうるので、補助金申請のハードルが下がったと言えます。
まとめ
日本では二酸化炭素排出量を2030年までに、2005年との比較で50%以上の削減を行うという大きな目標があります。その実現に向けた政府の動きの一環ではありますが、公共の利益だけではなく、省エネ住宅はシンプルにエアコンが効きやすく、電気の使用量を減らすことのできる住宅で、生活へのメリットが大きい住宅でもあります。
昨年度の同じ事業よりも補助率が大きく上がっているので、ちょっとした工事でも補助の対象となりやすく、リフォームしようか迷っている方にはよい後押しになるのではないかと思います。