リフォームをすると「固定資産税」上がる・再評価?
リフォームしたいけれど、その後の固定資産税というランニングコストが気になってなかなか決断できない、という方がいるかもしれません。
本コラムでは、固定資産税の仕組みからリフォーム工事との関係について紹介します。
リフォームすると固定資産税は変わるのか
結論から言うと、多くの場合でリフォームによって固定資産税が上がることはありません。
しかし、リフォームの規模や内容によっては上がることがあるリフォームもあり、逆にリフォーム減税に該当すると、一時的にではありますが固定資産税が下がるリフォームもあります。
まずは固定資産税がどのようなものなのか、大まかに解説していきます。
固定資産税とは
名前の通り、固定資産にかかる税金のことで、地方税法第341条以下に定められている地方税です。固定資産とは、流通を目的としない、消耗品でもないような資産のことをいいます。
身近なものであれば、土地や建物、車が該当し、それぞれに固定資産税が課税されることになります。土地も建物も所有している場合は、その両方に課税されます。
固定資産税は、その年の1月1日時点で所有している固定資産に対して、所有者が市町村(東京23区は東京都)に支払う税金となります。
固定資産税の算出方法
固定資産の種類によって税額の算出方法が異なりますが、本コラムではリフォームが関係する建物について紹介します。
固定資産税 = 固定資産税評価額 × 税率(1.4%)
税率は1.4%であることが多いですが、自治体によって異なる場合があります。
固定資産税評価額とは、その時点での建物の金額的な価値を評価したもので、3年ごとに見直されます。
築年数を経るごとに建物の価値は下がっていくとみなされ、評価額も下がっていきます。
固定資産税評価額 = 再建築価格 × 経年減点補正率
再建築価格は、その建物を新築するとした場合にかかる建築費のことで、経年減点補正率は築年数を経るごとに下がっていき、最も低い経年減点補正率は0.2となります。
仮に再建築価格が1,000万円の建物の経年減点補正率が下限まで下がった場合の固定資産税額は、
10,000,000円×0.2×0.014(1.4%)=28,000円
ということになります。
放っておくと価値が下がることは感覚的に分かりやすいとは思いますが、リフォームをすることで建物内での生活が改善することから、建物の価値が上がるという風に考えられるかもしれません。しかし個人の感覚が税額に反映されるということはなく、その価値の変動は法の定めによって調整されます。
固定資産税が上がるリフォーム
固定資産税が上がる結果につながるリフォームは、大まかに分けて3つあります。
①大規模修繕(スケルトンリフォーム)
建物の主要構造部である柱や梁・壁・床・屋根・階段のうち、1種類以上の部分を半分以上改修する「大規模修繕」をする場合には「建築確認申請」をしなければならず、建築確認申請によって建物が再評価され、多くの場合で固定資産税が上がることになります。
そこまでの改修となると、ほとんどの場合は、住宅を骨組みだけになるまでいったん解体し、内部構造を作り変えるほどの規模のスケルトンリフォームとなります。
②延床面積の増える「増築」
建物の延床面積を増やす増築も、建築確認申請が必要となり、建物の再評価につながります。固定資産税の計算式に登場した「再建築価格」の計算の中で、その市町村の建物の1平方メートルあたりの平均的な価格に延床面積を掛けた値を用いるため、延床面積が増えれば再建築価格は必然的に上昇します。
③建物の用途が変わるリフォーム
住居用から事務所などに変更を加えるためにリフォームする場合も建築確認申請が必要となります。また住居用から事務所や店舗などに変更すると、建物が再評価されるだけでなく、経年減点補正率の下がり方も緩やかになるため、築年数を経ても固定資産税の下がり方が住居用から比べて緩やかになります。
3つの項目すべてで「 建築確認申請 」という言葉が出てきましたが、建築確認申請とはどのようなものなのでしょうか。
建築確認申請とは
主に新築の時に建築物が合法であるかを調べるための申請です。
建物を建てるときには様々な法律に則している必要があります。代表的な法律は建築基準法ですが、それらに違反していないかをチェックすることで、適正に周辺環境に配慮され、安全に生活することができるようになります。その時の調査結果が固定資産税評価額に影響することとなるのです。
新築でなくとも、上記の3項目に該当するようなリフォームを行う場合は建築確認申請が必要です。それによって建物が再評価されます。リフォームをすることで建物の価値が下がるということはまずあり得ませんので、建築確認申請イコール固定資産税の増額につながる、と考えておよそ間違いありません。
逆にいうと、建築確認申請が不要なリフォームであれば、建物が再評価されることがないため、固定資産税が上がることはほぼないと言えます。
固定資産税が変わらないリフォーム
固定資産税が変わらないリフォームは、大まかに4つあります。
①劣化を保全するような、生活に必要なリフォーム
壁面塗装や設備の入れ替えなど、建物の経年劣化を補うようなリフォームは建築確認申請が不要です。
②間取りの変更のないリフォーム
大規模修繕の要件に該当しないような、主要構造部をいじらないリフォームも建築確認申請が不要です。
③木造2階建て以下の住宅の工事
延床面積500平方メートル以下の木造2階建て以下の住宅の工事で、増築しないものはスケルトンリフォームであっても建築確認申請が不要です。
④集合住宅の専有部分のリノベーション
アパートやマンションの集合住宅の、専有部分のみのリノベーションは建築確認申請が不要です。ただし、管理組合への届け出は必要となります。
上記が、「生活は改善したけど固定資産税は変わらない」というリフォームに該当すると言えるでしょう。
多くのリフォーム工事がこれらの「建築確認申請が不要なリフォーム」にあたるため、固定資産税の変動に関わらないと言われる根拠になっています。
ただし、建築確認申請が必要かどうか、基準に対して微妙なリフォームというものはあります。また自治体や審査機関によって判断が異なることもあります。その点の判断は個人ではせず、専門家に任せるのが確実でしょう。
そして、リフォームの内容が一定の条件下で逆に減税対象となる「リフォーム減税制度」によって、リフォーム後の固定資産税が1年間減額される制度もあります。
固定資産税の減税に関わるリフォーム減税制度
固定資産税の減税につながるリフォームは、大まかに分けて4つです。
①耐震リフォーム
古い建物を現行の耐震基準に適合させる耐震改修工事に対して、翌年の固定資産税が2分の1軽減されます。
昭和57年(1982年)1月1日以前からある建物
・現行の耐震基準に適合させる工事
・工事費が50万円以上
②バリアフリーリフォーム
住宅の要件が以下に当てはまる建物で、以下の工事の条件を満たすバリアフリーリフォームは、翌年の固定資産税が3分の1軽減されます。
・築10年以上経過している
・賃貸でない
・65歳以上の方、要介護・要支援認定を受けた方、障害のある方のうちいずれかが居住している
・リフォーム後の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下となる
・工事費用が補助金等を除いて50万円以上かつ
1.通路などの幅を広げる
2.階段の勾配を緩やかにする
3.浴室の改良
4.トイレの改良
5.手すりを付ける
6.段差の解消
7.出入り口の改良
8.滑りにくい床に替える
上記のうちいずれかを行う
③省エネリフォーム
以下の要件に該当する省エネリフォーム工事を行うと、翌年の固定資産税が3分の1軽減されます。
・平成26年(2014年)4月1日以前から存在する
・賃貸でない
・改修工事後の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下となる
1.窓の断熱工事(必須工事)
2.床・壁・天井の断熱工事
3.太陽光発電設備設置工事
4.高効率空調機器設置工事・高効率給湯器設置工事・太陽熱利用システム設置工事
※「1」を必須工事として、そのほか2~4のいずれかを行う
・改修部位が平成28年(2016年)省エネ基準相当に適合する
・工事費用が補助金等を除いて60万円を超える
④長期優良住宅化リフォーム
以下の要件に該当する長期優良住宅化リフォーム工事を行うと、翌年の固定資産税が3分の2軽減されます。
・耐震改修工事と合わせて行う場合は、昭和57年1月1日以前からある建物
・省エネ改修工事と合わせて行う場合は、平成26年4月1日以前からある建物
・改修工事後の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下となる
・床面積の2分の1以上が居住用
・一定の耐震改修工事もしくは、一定の省エネ改修工事と合わせて行うこと
・長期優良住宅の認定を受けていること
・耐震改修工事費用が50万円以上となること
また、省エネ改修工事費用が補助金等を除いて60万円以上となること
まとめ
多くのリフォーム工事では固定資産税に影響することはありません。建築確認申請が伴う場合は増額しますが、耐震・断熱・バリアフリーなど要件を満たせば減税対象となるリフォームもあります。
これからどのようなリフォームをするか、その選択肢を決める参考になればと思います。