「 屋根・外壁 」リフォームの種類と費用
屋根や外壁は、外の環境にさらされながら家を守る重要な部分です。
屋根や外壁の劣化を放置し続けると雨漏りやひび割れ、崩れが始まり、地震などのきっかけで建物自体が倒壊してしまうことにもつながります。リフォームやメンテナンスをすることで寿命を延ばすことができますし、科学技術を駆使したより高機能なメンテナンスもあります。
このコラムでは、生活を守る門番である屋根や外壁のリフォームの、種類や費用についてご紹介します。

一般的な屋根の種類
スレート屋根
セメントに繊維を混ぜて成型した、厚さ5ミリほどの屋根材です。軽くて安価なのが特徴で、素材自体の耐久性はそれほど高くありませんが、耐久性のある塗料や遮熱塗料を選ぶことができるため、デメリットを補うことができます。
コロニアル・カラーベストなど商品名で呼ばれることもあります。

金属屋根
ガルバリウム鋼板やトタンといった金属素材を用いた屋根です。ガルバリウム鋼板はトタンより高価ですが、耐久性に優れるため、近年ではガルバリウム鋼板の方がよく採用されています。

瓦屋根
瓦を用いた昔からある屋根のスタイルです。耐久性が高く、塗装も不要ですが、瓦自体が重いため地震にあまり強くないといったデメリットがあります。

屋根リフォームの種類
葺き替え
古い屋根材を撤去し新しい屋根材に張り替える工事です。屋根の劣化がひどい場合や下地材を張り替えたい場合などに行います。
屋根材を自由に選べる、下地材を新しくできるメリットがある一方、工期が長く廃材も出ることから費用が高くなります。
また、2004年10月以前のスレート屋根にはアスベスト(石綿)が使われていることがあり、その場合には規定のアスベスト飛散防止策が必要となります。その費用が別途発生します。
カバー工法(重ね葺き)
既存の屋根材の上に新しい屋根材を覆いかぶせる工法です。
屋根が二重になるため断熱性や防水性が増す、工期・費用を抑えることができるといったメリットのほか、屋根が重くなるため耐震性能が下がる、下地の劣化を見落とすと後々の補修が大変になるといったデメリットもあります。
また、カバー工法を2度行うことは不可能です。1度カバー工法で屋根リフォームを行ったあとは、それ以降は葺き替え工事にしなくてはなりません。
屋根塗装
屋根表面のさびや汚れを落とした後に塗装を施す工事です。
既存の屋根の状態が良い場合に行われるもので、劣化がひどい場合には葺き替えや重ね葺きをする必要があります。ただ、それらの工事に比べて工期や費用を抑えられるのと、大きな工事音がしないというメリットがあります。
耐久性は既存の屋根の状態や塗料によるため、他の工事より頻繁に工事を行わなければならない可能性が高くなってしまうデメリットがあります。
部分補修
部分補修は、劣化した部分のみを補修する工事です。補修する部位によって費用相場が変わってきます。
主な内容は、破損した瓦のみを交換する補修、瓦を支えている漆喰の詰め直しなどを行う漆喰の補修、屋根の頂上の金属のふたを交換する棟板金の交換、屋根に降った雨を一旦集めてまとめて下に流す雨樋を交換する工事となります。

部分補修は、必要な部分のみを補修するため工期や費用を抑えることができますが、補修しなかった部分の劣化が見つかるとまた補修しなくてはならない、というように、複数回補修が必要になるかもしれません。
基本的に屋根には均等に負荷がかかっているため、突風や落下物など、はっきりした原因や明らかな部分的破損がない限り、部分補修だけで済むことがあまりありません。
以下は屋根リフォームの工法別の相場を表にしたものです。葺き替えの場合、新しい屋根材の素材や下地材をどうするか、アスベスト対策が必要かどうかによって金額は大きく変わってくるため、あくまで参考値としての数字となります。

一般的な外壁の種類
サイディング
サイディングとは、建物の外壁に張る仕上げ用の板材のことで、サイディングボードとも呼ばれます。かつてのモルタルに変わる現在の主流となっているのがサイディングです。

窯業系(ようぎょうけい)サイディングボード
セメントにパルプや木の繊維を混ぜて成型したものを窯で焼いて固めて作るサイディングです。豊富なデザイン、防火・耐久・安定性に優れ、加工もしやすいためメンテナンスも比較的簡単です。現状、一般的な戸建ての約75%が窯業系サイディングです。
金属系サイディング
ガルバリウム鋼板などの金属で断熱材などの芯材を表裏から挟んで作られているサイディングです。金属は吸水しないため、寒冷地での凍害に対して強いのが特徴です。
< 凍害とは >
凍害とは、水分の凍結による建物への被害のことです。水は凍結すると膨張するため、サイディングに染み込んだ水分が凍結したときにサイディングにかかる圧力で劣化が進んでしまいます。凍結と溶解を繰り返すような寒い土地で吸水性のある素材を使用していると一冬ごとに劣化していくことになります。
このような凍害を防ぐことができるのも金属系サイディングの特徴です。また、モルタルに比べ重さが約10分の1(窯業系サイディングは約2分の1)で、軽いほど地震に強いということにつながるため、金属系サイディングの採用も広まってきています。
モルタル壁
セメントに砂を混ぜて練ったものをモルタルと呼びます。壁にモルタルを塗りつけることで外壁としているのがモルタル壁で、職人の技術により高いデザイン性を持たせることができたり、継ぎ目がなく美しい見た目を演出したりすることができます。

外壁リフォームの種類
張り替え
既存の外壁を取り払って骨組みだけの状態にし、新たに下地と外壁材を取り付ける方法です。
下地から行うため、強度を上げるために筋交いを追加するなど変更を加えることもできるメリットがある一方、廃材が生まれるためその処理費用も負担しなくてはなりません。工事のコストは最も大きくなります。
張り替えが必要な状態
外壁の劣化が進行して雨漏りが生じてしまった場合や、腐食や崩れがあるなど、補修不可能な劣化度合いの時に張り替えを行うことになります。モルタル壁は張り替えを行うことができず、モルタルを撤去し新たに外壁を造るといったリフォームとなるか、後述しますカバー工法、塗り替えといった手段となります。
カバー工法(重ね張り)
既に設置されている壁材を生かしてその上からサイディングボードを張る方法です。
既存の壁材に重ねるため、耐震性能を下げ過ぎないよう軽量な金属サイディングを使用することが多くなります。
既存のサイディングの劣化が激しいと張り替えを選ばざるを得ないことがあります。
重ね張りが必要な状態
塗り替えだけでは補修しきれない程度の劣化度合いの場合に行います。外壁材を重ねるため、断熱性や遮音性を高めることもできますし、イメージを大きく変えることもできます。
塗り替え
必要に応じて外壁表面の軽微なひび割れや汚れなどを補修してから塗料を塗りなおす、劣化の度合いが軽い場合に行われる、最も一般的で低コストの方法です。
塗り替えをすることで外装を美しくするとともに防水性を取り戻すことができます。
塗り替えが必要な状態
軽度のひび割れがある場合や、表面を手で擦ると黒板のチョークのように手に白い粉がつくチョーキングという現象がある場合、表面の塗膜の剥がれや膨れがある場合、コケや藻が生えてきている場合などには塗り替えで対処することが多いです。

外壁塗料の種類と費用
外壁塗料には多くの製品があり、科学技術の進歩によって優れた塗料が開発されています。
アクリル塗料
低価格で発色がよく、弾性のものはひび割れに追従するためひび割れに強いですが耐用年数は3年~8年と短く、短期用の物件に使われることがあるという程度で現在はほとんど使われなくなりました。
ウレタン塗料
塗る場所を選ばずに使えてアクリルよりも耐用年数が長い(5年~10年)ですが、こちらもよりよい製品が出ているため現在はあまり使われません。
シリコン塗料
かつては最も一般的であった塗料で耐用年数も7年~15年と長いですが、近年はもっと優れたものが出てきており、人気はやや低迷しています。
ラジカルフリー(制御型)ハイブリッド塗料
現在メーカーの開発競争が最も激しいジャンルといえます。耐用年数は8年~16年で、この種のほとんどの塗料が低汚染機能を備えています。塗膜の色褪せの原因となる紫外線を吸収し、劣化の原因となる成分であるラジカルを閉じ込めて抑え込むことで劣化を防ぐ機能が備わっています。
フッ素塗料
高価ではありますが耐候性と寿命の長さ(12年~20年超)が特徴です。あまり頻繁にメンテナンスができない建物によく採用されており、スカイツリーの塗装に使われています。
無機塗料
耐用年数がとにかく長く、20年かそれ以上と言われています。公共性の高い建物や海の近くの工場などで採用されており、住宅に使うには、耐用年数が長すぎて他の部分のメンテナンスサイクルと合わず、かえってコスト高になる可能性もあります。
光触媒塗料
酸化チタンを顔料に混ぜることで、日光が当たると汚れを分解する光触媒として汚れに強い外壁にすることができます。またナノテクノロジー技術で塗料の主成分である樹脂を10億分の1メートルにまで極小化させることで親水性が増し、雨で汚れが落ちるようになるセルフクリーニング機能があります。
酸化チタンは白い物質のため、光触媒を生かすためには外壁を明るい色にしなくてはなりません。

外壁のメンテナンスは、およそ10年おきに塗り替えを行い、35年ほどで重ね張りや張り替えを行うのが一般的と言われています。
重ね張りや張り替えで言われている寿命は定期的に塗り替えを行うことを前提とした期間であるため、塗り替えをせずに放置し続けると20年ほどで外壁の寿命がやってくることもあります。
まとめ
屋根や外壁は、外から見た家の雰囲気を決める顔の役割も果たす一方、最も過酷な環境下に晒されている場所でもあります。暑さ寒さや雨風、地震や時には飛来物からも家族を守ってくれる大切な存在ですので、定期的にメンテナンスをして家全体をしっかりと保てるようにしておきたいものですね。