「屋根葺材(やねふきざい)」とは(建築 用語解説)
屋根を仕上げ材で覆うことを「屋根を葺く(ふく)」といい、屋根葺材(やねふきざい)とは、建物を日差しや風雨から守るために屋根の仕上げに使う建材の総称を指します。
万が一、近隣で火災が起きた場合、飛び火などで燃え移らないようにするため、特殊な場合を除き耐候性が高く、吸水性が少ないなど、長期間にわたって建物を守る性能が要求されます。
一般的に住宅が建てられる地域は、建築基準法22条指定区域内にあり、屋根材に不燃性能が求められます。
屋根材は耐久性の高さも重要です。非常に耐久性の高い屋根材もありますが、どの屋根材もメンテナンスは必要です。
一般的な木造住宅で使われる屋根材
【 瓦 】
粘土を高温で焼いて形成された粘土瓦は、古くから日本家屋の屋根として使われています。
断熱性や遮音性に優れ、瓦自体は半永久的に使うことのできる素材ですが、下地などは定期的なメンテナンスが必要です。
粘土瓦の表面にガラス質の釉薬を塗って焼き上げた瓦です。
水の浸透がないため凍害(瓦の内部に水が浸透し、凍結、膨張により劣化すること)に強く、色鮮やかな状態が半永久的に続きます。耐用年数はおおよそ50~60年です。
青い釉薬瓦
釉薬を塗らず表面処理がされていない素焼きの瓦です。
沖縄の赤瓦や、ヨーロッパのスペイン瓦やテラコッタ瓦などが有名です。
吸水性があるため釉薬瓦より耐久性が劣るため、耐用年数はおおよそ40~50年です。
沖縄の赤瓦
焼き上げる工程で燻し、表面に炭素膜を形成させ、これによって水を弾き、瓦を保護しています。
耐久性は釉薬瓦よりも少し弱く、経年劣化により変色します。 耐用年数はおおよそ40年前後です。
古くなった いぶし瓦
セメントで形成された瓦で粘土瓦と比べると安価です。定期的な塗装などのメンテナンスが必要です。
経年劣化による割れが発生することがあります。
【 スレート系 】
スレートとは粘板岩を薄く板状に加工した天然石の屋根葺き材です。
この粘板岩を素材としたものは「天然スレート」と呼ばれます。
天然スレートの他に「化粧スレート」があり、これはセメントに繊維素材を練りこみ、薄い板状に加工したものです。
繊維材料を混ぜ込んだセメントを成形した板状の合成スレートの表面に塗装を施した物です。
スレートは製造時期によって特徴が違っており、20年以上昔の初期のスレートは、セメントの他に今では使用禁止となっているアスベスト(石綿)が含まれていることから石綿スレートと呼びます。
それ以降はノンアス(アスベスト無しのスレートのこと)と呼びます。
「カラーベスト」や「コロニアル」などの商品名で呼ばれることもあり、現在もっとも普及している屋根材のひとつです。
スレート
粘板岩(主に玄昌石)をうすく板状に加工したものです。石を加工するので重量があり、耐震性の確保に配慮が必要です。
石材なので吸水性も低く汚れにも強く、耐久性が非常に高いというメリットがあります。
採掘される国や地域の気候状況により、さまざまな色があり1枚1枚が異なります。 自然の風合いや素材感はとても魅力的ですが、日本ではあまり普及していません。有名な建築物では東京駅丸の内駅舎などで使われています。
天然スレート
【 金属屋根 】
薄く軽い金属板を様々な形状に加工して使う屋根材で、耐久性・防水性も高いのが特徴です。
緩い勾配でも使用できるというメリットもあります。
日本でも古くから利用されている金属です。建物では屋根材だけでなく樋として使われたり、柱の根元や梁の端部を覆った装飾に使用したり様々な箇所で見られます。
新品は光沢のある赤銅色をして建物と馴染まないかもしれませんが、半年ほどで光沢は落ち着いてきます。
時を経ることで暗い褐色から数十年後には緑青色になります。
この緑青の被膜には内部への腐食を防ぐ効果があり、それ以上錆が進まず耐久性を高めます。
真新しい銅板屋根
ガルバリウム鋼板は鋼板をベースに亜鉛やアルミニウム、シリコンのメッキ層を施したものです。
耐久性が高くサビにくいというメリットがあり、日本の多くの住宅でもガルバリウム鋼板が使用されています。
表面に塗装を施したカラーガルバリウム鋼板が良く利用されています。耐用年数は20~30年です。
ガルバリウム鋼板
【 アスファルトシングル 】
ガラス繊維(グラスファイバー)にアスファルトをコーティングし、その上に砂粒で表面を着色した屋根材です。
シート状になっており、軽量で柔らかく施工性に長けています。
アスファルトシングルは100年以上前から使用されていて、北米でのシェア率が高い屋根材です。
法律改正について
国土交通省は建築基準法の告示基準(昭和46年建告109号)を改正し、令和4年1月1日以降に着工する新築または増改築するすべての瓦屋根の固定を義務化 しました。緊結方法が強化・義務化されたのは、瓦屋根(粘土瓦・セメント瓦)のみであり、スレート屋根や金属屋根は、既に耐風対策が取られているため対象ではありません。
近年、大型化が心配される台風や、いつ起こるとも知れない地震などによる屋根材のズレや剝離、落下などで起こる被害を最小限にするための改正です。
今回の改正により、昭和46年建設省告示第109号に不適合となる瓦屋根を有する建築物は、建築基準法上、既存不適格建築物となりますが、ただちに改正後の基準への適合を求められることはありません。
※今回の改正で既存不適格となった建築物を増改築する場合、増改築部分以外の既存部分へは、改正後の基準への適合を基本的には求めない(遡及適用しない)扱いとする。(平成17年国土交通省告示第566号等)