「 団地リノベーション 」のメリット・デメリット
自分の家を持ちたいけれど、あまり費用を掛けられない、あまり遠くに家を建ててもそれから大変そう、といった方には都市部にあって費用が抑えられる団地の購入がおすすめです。
購入した団地をリノベーションすることでお気に入りの空間にすることができますし、マイホームにあって団地の恩恵を受けることもできます。とはいえ団地であるがゆえのデメリットも存在します。
このコラムでは、団地をリノベーションすることのメリットやデメリットを紹介します。
団地のリノベーションとは?
団地を購入して、その物件の設備や内装をすべて解体撤去し、居住者の生活スタイルに合わせて改装することを言います。
団地は、勝手に内装や設備を変えることができないと思われがちですが、購入した物件であればリノベーションすることができます。
リノベーションした団地に自身が住むことはもちろんできますし、リノベーションした物件を賃貸で貸し出すことも可能です。
なお、リフォームとリノベーションにはっきりとした違いは定められていませんが、リフォームは主に補修や修繕、設備の入れ替えを目的とした改修、リノベーションは総合的に変更を加える改修のことを指す場合が多いです。また、リノベーションという言葉に替えて、あえて「全体の改修」を強調したフルリフォームやスケルトンリフォームと呼ぶこともあります。
団地とマンションの違い
団地とマンションは明確に区別されているわけではありませんが、一般的な慣習として呼び方の違いはあります。
マンションは、鉄骨鉄筋コンクリートなどで建てられた、3階以上の規模の共同住宅(2階以下はアパートと呼ばれることが多い)の、建物そのものを指すのに対し、団地は、共同住宅の集合体もしくはそのエリア全体を指して呼ぶことが多いです。団地のエリアの中には住宅以外にも公園や店舗、病院、保育園などがある場合もあります。
また、都市再生機構(UR)や自治体による公団住宅のことを指すこともあります。
団地リノベーションのメリット
購入費用が安い
団地の多くは1960年代~1970年代の高度経済成長期に建てられており、築年数にして50年~60年になるものが多くあります。
一般的に物件の資産価値は、築25年以降から底値に近づくため、築浅の中古物件やマンションを購入してリノベーションする場合に比べ総合的な費用がかなり抑えられます。
建物構造が頑丈
団地の建物の多くは「壁式構造」という建築方法を用いています。壁式構造とは、建物を支える部分を柱ではなく壁「面」にする建築方法で、梁と柱で支える「ラーメン構造」より頑丈な構造になっています。
建築時には、建築基準法に基づいた耐震強度で建築されており、1981年に建築基準法が改められる前に建てられた建物も含め、2016年時点でURが所有する99%以上で耐震診断が実施済みで、また多くの団地で耐震補強工事がなされています。
ちなみにラーメン構造のラーメンとは、ドイツ語で「枠」や「額縁」を意味するもので、だしの効いたスープに中華麺が入っているものではありません。
周辺環境がよい
団地は都市計画の下で形成されており、広い土地にゆったりと余裕をもって建設されているものが多く、駅や商業施設が近かったり、病院や保育園が併設されていたり、立地条件に優れているところが多いです。
また、周辺に公園や緑地帯を設けているところもあり、便利さだけでなく心地よい空間づくりが出来ているのも団地のメリットとなります。
建物そのものも通風や採光に優れた方角で建てられており、その点も団地の良さであるといえます。
おしゃれな暮らし
購入費用が安いぶん、リノベーションにじっくり費用をかけることが出来るようになり、こだわりや家族の意見をより多く反映できるようになります。
画一的で没個性な団地のイメージとは裏腹に、デザイナーズマンションのようなオリジナリティのある、豊かな暮らしを作ることも夢ではありません。
近隣住民との交流
棟数の多い団地には自治会が存在します。共用部分の掃除や季節の行事など、近隣住民とのコミュニケーションの場がある程度備わっています。
これは一長一短ではありますが、近隣住民と相互補助することができるということです。日ごろから周りの住民に声を掛けたりすることで毎日を明るく過ごせるかもしれませんし、万が一の時の助けになるというのも団地の強みであるといえます。
団地リノベーションのデメリット
建物そのものは古い
耐久性や老朽化の心配については多くの団地でクリアできていることではありますが、どうしても経年劣化を感じてしまい、古臭さが否めないということはあり得ます。
しかし団地によっては、こまめに外壁塗装をしてあったり、メンテナンスを頻繁に行っていたりして、劣化を感じさせにくいようにしてあるところもあります。
エレベーターが付いていない可能性
現在の建築基準法では、高さ31メートル以上の建物にエレベーターが設置されることになっています。31メートルは7階~10階の高さに相当するため、6階層以下の団地にはエレベーターの設置義務はありません。
また、旧建築基準法の下で建築された団地にはエレベーターが無い場合があります。
といっても高齢者向け共同住宅には3階層以上の建物でエレベーターの設置義務がありますし、基準を満たさなくても利便性を考慮してエレベーターを設置している団地も数多く存在しています。
実際に住む階層が低層であれば問題はないと思いますが、団地にエレベーターが設置されているかどうかは、その都度確かめる必要があります。
騒音問題
団地は近隣住民との生活の場所が近いため、お互いに騒音に気を付けなければなりません。小さな子が上階や近くに住んでいるようならある程度の騒音は仕方ありませんし、こちらも下層階や周辺に過度なストレスを与えないように生活する必要があるでしょう。
リノベーションの際に防音材を敷くなどである程度対策とすることはできます。
天井が低い可能性がある
階層の多い団地は、天井が低い可能性があります。リノベーションをするときに床材の選び方によっては床の高さが異なってくるため、天井が低い物件をリノベーションするときには気を付ける必要があります。
近隣住民との交流が煩わしい
人によってコミュニケーションの距離感が異なるため、自分では適切な距離を保ちたいと思っていても、それ以上に距離感の近い人もいます。また自治会の行事なども面倒と考える人にはストレスになる可能性があります。
失敗を防ぐために気をつけること
耐震構造が優れているかなどの見極めが必要
多くの団地で耐震補強工事がされていますが、購入を検討している団地で補強工事が行われているかを調べることをおすすめします。団地を扱う自治体やURのホームページで詳細が公開されているので、検討している物件があれば調べてみましょう。
変更の効かないところがあるかをあらかじめ調べておく
団地の多くは壁で建物を支える「壁式構造」を採用しています。梁と柱で建物を支える「ラーメン構造」は壁のすべてを取り払ってリノベーションすることができますが、壁式構造を採用している建物では支えになっている壁を取り除くことはできません。
したがって、壁式構造の建物をリノベーションするにあたって「壁を取り除いて空間を広く保つ」といった方法を選ぶことができない場合があります。
団地のすべてが壁式構造というわけではないので、ラーメン構造の団地では可能な場合もあります。
地域コミュニティの質や相性を見極める
建物は良くても地域の行事やコミュニティが合わない、という可能性もあります。ゴミ出しのルールや郵便受けの構造、団地の自治会や互助会のようなものがあるか、どのような行事があるか、日常に影響のでるものがあるかなど、事前に調べられることは調べておいた方がよさそうです。
立地のチェック
団地は、そのエリアありきで都市づくりがされていることがあるため周辺の施設に優れていることが多く、立地条件は良いものが多いです。それでも自身の生活環境やよく利用する施設が近くにあるかを調べておくのがよいでしょう。
また、団地に限った話ではありませんが、自治体で公表しているハザードマップをチェックして建物が危険区域に入っていないか、災害時の安全性や避難場所なども確認しておきましょう。
団地の建て替え計画があるかどうか調べる
耐震性を考慮して建築されている団地ですが、どうしても老朽化が進んでしまい、やむを得ず建て替えをすることがあります。せっかくリノベーションしたのにすぐに建て替えられてしまうと元も子もなくなります。リノベーションする前に、建て替え計画があるかどうか、確認しましょう。
また、リノベーションしていないうちに建て替えがされるのであれば、居住者の負担なく設備の新しい物件に住むことができるようになるため、建て替えは基本的にはメリットでもあります。
その他の団地リノベーション
借りている団地を自分でリフォームするUR-DIY
自分でリフォームしてみたいという方には、現在、数は少ないですが、物件を購入せず、賃貸の状態のまま自分で部屋をリフォームすることができるUR-DIYというものもあります。
特徴としては、退去時の原状回復が不要であることや、入居から3か月間は家賃がかからず、DIYに専念できる期間が設けられている点です。
団地を購入してリノベーションする、ということ自体あまりなじみがないのですが、住宅購入のひとつの選択肢に十分考えられる方法だと思います。
地域交流が好きな方や費用を抑えたい方は、団地リノベーションを検討してみてはいかがでしょうか。