「 土壁・砂壁 」リフォームのメリット・デメリット

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おじいちゃん・おばあちゃんの家で見たことある、という方も多いと思いますが、古くからある日本家屋では、よく「 土壁 」や「 砂壁 」を見ることができます。和の空間を演出するためだけでなく、最近はその特性から、再び土壁や砂壁が見直されるようになってきており関心が高まっています。

 

本コラムでは、土壁・砂壁とは一体どのようなものなのか、また、クロス(壁紙)と土壁や砂壁の違い、リフォームのメリット・デメリットについて掘り下げていきます。

 

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土壁

土壁とは、その名の通り、土を使用して作られた壁のことで、外壁・内壁両方に採用されうるものです。
天然素材を使用していることが最大の特徴です。竹や藁(わら)で骨組みした壁に、その土地で採れる土を乾燥させながら上塗りするという工程を繰り返し、最後には表面材としての土を塗って乾燥させて仕上げる、という造りをしています。

 

 

土壁の表面に使われる土の種類


漆喰や珪藻土が使われることが主ですが、その他に赤土や黒土など、その土地に適した素材を使用することもあります。

 

漆喰は江戸時代以前から用いられている壁材で、石灰岩を焼いて作られています。表面がつるつるして加工がしやすく、デザイン性が求められるような場所にも人気です。

漆喰は、100年以上かけてゆっくりと空気中の二酸化炭素を吸収することで、石灰岩と同質の炭酸カルシウムに変わっていき、岩石同様の強度になるため、長い年月をかけるほど耐久性が増していくという特性があります。

 

珪藻土は、植物性プランクトンなどが堆積してできた地層の土を使用しています。細かい穴がたくさん開いた構造の多孔質素材であるため、通気性・吸湿性に優れています。さらに表面が粒々していることから土らしい質感を得られます。

また、土の中に藁を混ぜることもあります。藁を使うと繊維質がつなぎの役割をして調湿性の向上、耐久性の補強にもなります。

 

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■ 土壁を採用するメリット

調湿・調温作用

 

土壁は多孔質素材のため、湿度の高い時はその小さい穴に水分を取り込んで除湿し、また乾燥した日には含んだ水分を放出することで、自然に呼吸するように部屋の湿度を調整することができます。特に珪藻土にはその性質が強く表れています。
また湿度の調整がうまくいくと体感温度も調整され、快適に過ごすことができるようになります。

 

 

耐火・断熱性


土は無機質な物質でできているため、非常に燃えにくい壁材です。万が一の火災の時にも延焼を防いで、避難する時間を長らえることができます。
特に漆喰は建築基準法において不燃材料に認定されており、その耐火性の確かさが法で認められていますし、珪藻土はレンガの素材としても使われるほど耐火性にすぐれています。

 

 

吸音・遮音性

 

多孔質である土壁は吸音性・遮音性にも優れています。
音は空気の振動ですが、土壁に到達した音は内部の繊維を激しく振動させます。振動しあった繊維は摩擦熱に変換され、音としてのエネルギーを失い、外部に伝わる音を大きく減少させます。
実際にコンサートホールでも多孔質素材を使った壁材が採用されていることがあります。

 

 

有害物質の吸着


これも多孔質であることの恩恵のひとつですが、人体に有害なホルムアルデヒドなどを壁の小さい穴が取り込んで吸着してしまうため、シックハウス症候群などのアレルギーや嫌な匂いを軽減する作用があります。また、壁の素材自体が天然素材のため、そもそも有害物質の使用量を減らすことにも貢献しています。

 

 

デザインに独自性を持たせられる


壁の造りは左官職人が手作業で行います。職人の高い技術でもって壁面に立体感を持たせたり、陰影をつけたりするなど、こだわったデザインにすることも可能です。

 

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■ 土壁のデメリット

施工費用が高い

 

様々な表面の表現ができるためデザイン性に富んでいるのですが、それらはすべて職人の手作業で行うため、相応の技術料がかかることになります。工事費用は一般的に、クロス壁の施工よりも3~5倍かかるといわれています。
また、工程の都合上、工期が長くなるため、それもコストが増える原因になります。

 

 

工期が長い


塗り、乾燥、塗り、乾燥・・・と、壁が出来上がるまでに同様の工程を複数回繰り返すため、通常のクロス壁の工期よりも一か月ほど延びることを想定しなければなりません。

 

 

劣化した土壁を補修するのが容易ではない


基本的にはメンテナンスが不要といわれていますが、長期間使用するうちに紫外線に晒され続けることで表面の仕上げ材が劣化していくため、表面がポロポロ落ちてくることがあります。
壁の劣化の度合いにもよりますが、劣化が激しい時は下地補修といって、施工時の時のように土壁の素材を塗りなおすことになります。

 

 

汚れを水拭きできない


土壁が水分を吸収する性質のため、表面を水拭きすることができません。一般的には汚れを経年変化による「味」と捉えて付き合っていくものだといわれています。
もしくはサンドペーパーで軽く研磨して汚れを削り落とすということをする必要があります。

 

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砂壁

砂壁とは、石膏ボードや土壁、モルタルなどに上塗りする表面材として砂を用いた壁で、土壁同様に天然素材を使った壁ですが、土壁とは異なり主に内壁のみに採用されます。また、砂はあくまで表面だけで下地となる壁材の上にコーティングする形になります。

 

砂壁に用いられる主な砂の種類は、天然石・砕石・貝殻・金属粉・ガラス粉などで、これらの砂状の粉末を糊材で固めて表面を塗り固めていきます。
砂を固めるための糊材は、海藻の煮沸液やでんぷんなどが主流でしたが、近年では合成樹脂も使用されることが増えています。

 

 

■ 砂壁のメリット

調湿・調温

 

砂壁も多孔質素材を使用しており、土壁同様に調湿性・調温性に優れており、快適な空間にすることができます。

 

 

難燃・耐火性

 

こちらも土壁同様、無機質な素材から出来ているため難燃性・耐火性に優れています。

 

 

有害物質の吸着


多孔質である構造上、小さな穴に有害物質を吸着することができるため、アレルギーや嫌な匂いを抑えることができます。

 

 

 

■ 砂壁のデメリット

衝撃や擦れに弱い

 

粉末を塗ってあるため、衝撃や擦れに弱く、そのような時には砂がポロポロ落ちてくることになります。そうした場合、こまめに掃除が必要になります。

 

 

カーテンや衣服に擦れた場合、布地に砂が付着する

 

布製品で砂壁を擦ると表面の砂が布に付着してしまい、こちらも取り除くのが厄介です。

 

 

工期が長い

 

土壁同様に左官職人の手作業で行うため、通常のクロス壁と比べて工期が長くなり、結果費用が高くなることにもつながります。

 

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クロス壁のメリット・デメリット

クロス壁はいわゆる壁紙を使った壁で、ごく一般的な普及タイプの壁です。最近の住宅は気密性の高いものが多いのですが、気密性の高い住宅には、あえて換気システムを導入しなければならないことになっています。
土壁・砂壁は通気性に優れているため、わざわざ換気システムを取り入れる必要はありませんが、クロス壁を用いている住宅には換気システムが必要になります。

 

メリットとしては、土壁・砂壁よりも工期が短くコストも安いこと、壁を水拭きできること、壁紙の種類の数だけデザインに選択肢がある、ということにあります。


デメリットは、通気性に欠けることで空気や湿気がこもりがちになることや、自然な温度調整がなされずエアコンで調整する必要があるということ、防音性を出すために相応の措置が必要になる、などです。
どちらが優れている、という話ではありませんが、土壁や砂壁とクロス壁にはそのような性質の違いがあります。

 

 

クロス壁と土壁・砂壁にまつわるリフォームについて

「 土壁・砂壁を維持する 」、「 クロス壁から土壁・砂壁にする 」、「 土壁・砂壁からクロス壁にする 」という3パターンのメンテナンスやリフォームについて考察していきます。

 

① 土壁・砂壁を維持する


基本的にはメンテナンス不要といわれる土壁ですが、表面がポロポロ落ちてきてその掃除が大変になってきたり、ひびが目立ってきたりカビが生えてきたりなど、経年劣化の度合いが気になるほどになると、メンテナンスが必要になってきます。
劣化した壁の程度によって工事内容は変わってきますが、往々にしてメンテナンス・補修にかかる費用と時間がクロス壁よりもかかることになります。損傷がひどいと、漆喰などのもともとの材質を塗りなおすといった下地処理をすることになり、土の乾燥時間に1~2日は必要となります。
その後はしっかり作り直した分、改めて土壁・砂壁からの恩恵を継続して受けられます。

 

 

② クロス(壁紙)から土壁・砂壁にする


クロスの質や状態によって、壁紙を剥がして下地処理をするか、そのまま土を塗っていけるのかが変わってきます。
土壁の塗りにはたくさんの水を使います。壁の材質が水を吸ってしまうようなものなら、塗りに悪影響ですので、まずはその表面を変更する必要がでてきます。

 

●ビニールクロスは、状態が良ければ上から土壁を塗ることができる
築20年程度の住宅はほとんどがこのビニールクロスであるといえますが、ビニールクロスは水を吸わない性質のため、クロスに大きな割れや剥がれがなければビニールクロスの上から漆喰や珪藻土などを塗っていくことができます。

 

●紙や布のクロスははがす必要がある
紙や布のクロスは水を吸う性質があり、その上から土を塗ってしまうと壁紙の方に水分が奪われてしまい、塗り壁が安定しなくなります。壁紙が紙や布なら、剥がして下地処理する必要があります。
クロスを剥がした先、元々の壁が土壁なら、その劣化度合いによっては古い土壁を削り落として下地処理を施したうえで、改めて塗ることになります。

ビニールクロスの住宅なら、壁紙の上からでも土壁にすることができる可能性があり、工期やコストの短縮が見込めます。

 


③ 土壁・砂壁からクロスに替える


土壁や砂壁は表面に凹凸があったりザラザラしていたりして、接着力が十分に得られず、直接壁紙を貼るのには向いていません。表面を滑らかにしてから壁紙を貼ることになるのですが、既存の壁の状態の良し悪しによって工事内容が変わってきます。


壁の損傷が少ない場合は、表面をパテで平らに滑らかにしてからクロスを貼り付ける作業になります。
壁の損傷がひどい場合もしくは、部屋の柱や鴨井を隠してしまいたい場合には、石膏ボードやベニヤ板など平滑な板を設置してその上からクロスを貼ることになります。

 

 

最後に

クロス壁にも、土壁や砂壁にもそれぞれいいところがあります。
お住いの環境やご自身の好みに合わせて、土壁や砂壁を選んでみるのもいいかもしれません。

 


 


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