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部屋・床の段差解消「 バリアフリー 」リフォーム
~ 介護に備える実例と注意点 ~
今は何ともない家でも、体調を崩したり足腰が弱ってきたりすると、ちょっとした「 段差 」が気になり始めます。
ご自身のことだけでなく、ご両親の暮らしを見て不安を感じ始めた、という方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、老化や介護に備えるバリアフリーリフォームの中でも、最もご要望の多い「段差解消」について、注意すべきポイントと当社の施工事例を交えてご紹介します。
なぜ「段差解消」が第一歩なのか
バリアフリー リフォームのご相談では、「まず家の段差を無くしたい」と、足元の不安を最優先で解消したいとお考えの方がとても多くいらっしゃいます。年齢を重ねるとわずかな段差でもつまずきの原因となり、転倒して捻挫や骨折をされたというお話を、お客さまから伺うことも少なくありません。
■ 足が引っかかりやすい段差
住まいの中で、特に注意していただきたいのは次のような場所です。
・敷居
・廊下と部屋の段差
・風呂場やトイレの段差
・玄関、勝手口
このほかにも、改めて家の中を見渡してみると、古いお住まいほど、普段は意識していない小さな段差がいくつも見つかるはずです。
■ 「小さな段差」が危険な理由
意外に思われるかもしれませんが、階段のような大きな段差よりも、敷居や畳の縁、じゅうたんの端といったちょっとした段差の方が気づきにくく、危険です。
長年の生活に溶け込んでいるぶん、注意が向かないためです。
たとえば畳の縁は「段差」とは呼べないほどのわずかな盛り上がりですが、すり足で歩くようになると、意外と引っかかりやすくなります。
応急的には段差部分に目立つ色のテープを貼って注意を促す方法も有効ですが、リフォームで段差そのものを無くしてしまえば、つまずきや転倒の危険性を大きく減らすことができます。
■ 70代の約7割が感じる足腰の衰え
70代に入ると、約7割近くの方が、足腰の筋力の衰えであるロコモティブシンドロームを抱えると言われています。
歩くときにつま先を上げる、とっさのときに一歩踏み出して転倒をこらえる——こうした動作を支える筋肉は、加齢とともに確実に弱くなっていきます。
老化による身体の変化を前提に、あらかじめ床の凸凹をなくしておく段差解消リフォームは、転倒予防としてとても有効な手段の一つと言えるでしょう。
※ロコモティブシンドロームについて詳しくは日本整形外科学会のサイトをご覧ください。
和室・居室の段差解消
畳を敷き詰め、障子や襖でゆるやかに仕切られた和室は、光や風をほどよく取り入れられる、日本の住まいならではの心地よい空間です。一方で、座敷での生活より椅子中心の生活が楽に感じられるようになった方にとっては、少しずつ使いづらさが増えていく場所でもあります。
■ 畳は車椅子の負担になる
家の中で車椅子を使うようになったとき、思いがけず大変になるのが畳のやわらかさです。
車輪が沈み込むため方向転換をするにも余計な力が必要となり、介助される方の負担も増えてしまいます。車輪で擦れて畳が傷むのも気になるところでしょう。
また、歩行中に足が上がりにくくなった方にとっては、畳の縁のわずかな盛り上がりも転倒リスクにつながります。こうした理由から、多くのご家庭で和室からフローリングへ変更するリフォームが検討されています。
ただし、長年住み慣れた家で暮らしてこられた方にとって、全面がフローリングの洋風の住まいは、少し馴染めない部分が出てくるかもしれません。
住まいは家族の健やかさを守る場所であると同時に、心を落ち着かせ、ホッとくつろげる場所であることも大切です。
安全性とお気持ちの両面を見ながらプランを考えていくことをおすすめします。
和室・廊下のバリアフリー化事例
足の不自由なご家族のため、将来車椅子で生活できる環境を整えたいーーそうしたご要望から始まった工事です。実施した主な内容は次の3つです。
椅子での生活が楽になり、畳のままでは不便に感じておられたお客さま。
フローリングにしたことで、椅子中心の生活スタイルに無理なく切り替えられたと喜んでいただきました。
明るい色味のフローリングをお選びいただいたので、お部屋全体も明るい印象になりました。
昔は何ともなかった敷居も、年齢を重ねると注意すべき箇所に代わります。生活の一部として当たり前にあったものだからこそ、危険が見過ごされやすい場所です。
廊下をスロープにしておくことで、将来車椅子での生活になった場合にも安心して備えられます。
バリアフリー工事は、身体的な不便を解消できるだけでなく、これから先への精神的な不安をやわらげる一助となると、私たちは考えています。
■ 「畳で暮らしたい」を叶える小上がり
多世帯同居のリフォームでご家族皆さまからお話を伺うと、親世代の方から「やっぱり和室で畳に座りたい」という本音がぽろりと漏れることが少なくありません。
子世代はフローリング希望、親世代は畳希望——そんなときにご提案しているのが「小上がりの和コーナー」です。
これは床の段差をなくすリフォームとは逆に、あえてはっきりと高さのある小上がりをつくり、そこを畳敷きにするという方法です。
ある程度の高さがあることで「畳に直接座りたいけれど、床からの立ち上がりがつらい」というお悩みが改善でき、つかまり立ちが必要な方にも居心地のよい空間になります。
小上がりの高さを利用して引き出しを設ければ収納力も上がりますし、現在はお好みの大きさや形にカットできる畳もありますので、リビングの端やダイニングの横など、ご希望の場所に合わせてつくることが可能です。
トイレの段差解消3つのポイント
LDKの段差は、全体をフラットにすることで解消できますが、トイレの段差解消には、事前に押さえておきたい独特のポイントがあります。
築10〜20年以上のお住まいでは、トイレの床が廊下より一段低くなっている構造が多く見られ、「使いづらい」というお声をよくいただきます。
ただ、この構造にはもともと理由がありました。
ドアの開閉時にスリッパが引っかからないようにするためです。
内開きドアのまま廊下と同じ高さにしてしまうと、開け閉めのたびにスリッパが引きずられ、地味なストレスになってしまいます。
解決策としては、スリッパの使用をやめる、段差を完全になくすのではなく浅くしてつまずきにくくする、ドアを外開きや引き戸・折れ戸に変更する、といった選択肢が考えられます。
こうした小さな不便まで見落とさないことが、暮らしやすいリフォームには欠かせません。
段差解消とあわせて検討したいのが、ドアの開閉方法と開口幅です。
将来的に車椅子や介助が必要になる可能性を考えると、開き戸よりも折れ戸や引き戸の方が出入りしやすく、介助する方の動きにも余裕が生まれます。
スペースの制約で引き戸にできない場合も、折れ戸であれば小さな範囲の開閉で済むため有効な選択肢となります。
段差解消で床の高さを上げると、床から測る各種アクセサリーの高さも当然変わります。
見落とされがちですが、次のような部分は必ず見直しが必要です。
• 横向き手すりの位置、および縦手すりの追加
• 紙巻器の位置
• 照明の位置
当社では、標準位置から多少の余裕を持たせて壁の下地を入れておき、便器の取付け後に実際にお客さまに座っていただきながら、最適な高さでアクセサリーを取り付けています。
トイレの段差解消 事例3選
① 約16cmの段差をフラットに
浴室とトイレのリフォームをご依頼いただいたお客さま。
年齢的なことを考え、入口の段差を解消したいとのご要望でした。
こちらのトイレは階段下に位置しており、天井をできるだけ高く確保するために、床が約16cm下げて造られていました。
床を上げれば段差は解消できますが、その分だけ天井が近くなり、圧迫感が出てしまう懸念があります。
そこでまず図面を作成し、実際にお客さまに現場で立っていただいて天井の高さを検証しました。
床を約16cm上げた場合、立ち位置での天井までの高さは約183cm。
お客さまに確認いただいたところ、頭がぶつかることもなく、思ったほどの圧迫感も感じないとのことで、段差解消工事を行うことが決まりました。
■ 工事の流れ
1. 既存の便器を撤去し、根太を組んで床の下地となる合板を設置
2. 新しく取り付けるアクセサリーのために壁の下地を補強(縦手すりを設置できるよう、反対側の壁にも下地を追加)
3. 内装を仕上げ、新しい便器を設置し、手すり・紙巻器・照明の位置を調整
長年お悩みだった段差はフラットになり、高齢のお客さまも安心して使える、安全で使いやすいトイレになりました。
※こちらの物件は浴室のリフォームも行っています。『段差解消で日々の暮らしを快適に』の実例ページもあわせてご覧ください。
② 約45cmの段差を解消
洗濯機置き場を別の場所へ移設し、トイレを広げたリフォーム工事を紹介します。
こちらのお住まいでは、トイレに行くまでに一度土間へ降り、サンダルに履き替える必要がありました。
お客さまがご高齢になり、約45cmの段差を昇り降りするのがつらくなってきたため、土間に床を組んで、段差を解消することになりました。
あわせて、ご主人さまのご希望により小便器を新たに設置。小便器の正面と側面には清掃性のよいパネルを貼っています。
既存の窓については「竹細工が気に入っているので残して欲しい」とのご要望をいただき、内観は竹細工のシルエットを活かしたまま、防寒と防犯を兼ねて内窓を設置しました。
トイレ前のスペースが狭かったため、扉は小さな範囲の開閉で出入りしやすいトイレ用の折れ戸をご提案。
さらに外部2方向からの出入りの妨げにならないよう式台を設け、動線も改善しています。
③ 開口幅を広げ車椅子対応に
かつては大便器と小便器が別々に設けられているお住まいも多くありました。
こちらの物件もその影響で、トイレのドアは幅の狭い開き戸になっていました。
出入りのしづらさと、ご両親が将来車椅子で生活される可能性を考え、開口幅を広げたうえで折れ戸に変更。
これにより、車椅子の状態でも簡単に開閉できるようになりました(本来は幅の広い引き戸が理想でしたが、スペースの都合で断念しています)。
た、1畳ほどの空間に大便器と小便器が並んでいたため、特に大便器は前方の空間が狭く、使い勝手がよくありませんでした。
車椅子での出入りや介護のことを考え、思い切って小便器を撤去し、大便器のみを設置してゆとりのある空間としています。
介護を見据えたバリアフリーリフォーム
段差解消で足元の不安を取り除くとき、あわせて持っておきたいのが「介護が必要になった場合、そのリフォームで本当に十分か」という視点です。
■ 介助スペースまで考えて広さを決める
一人で使うぶんには余裕のあるトイレのスペースも、介助される方が一緒に入ると手狭に感じられるかもしれません。
そこに手すりを取り付ければ、さらに狭く感じられるでしょう。
「今の自分」ではなく「介助が必要になった時の自分と介助者」を基準に広さを考えることが大切です。
■ 手すりは左右両側の下地を準備
また、手すりをつける場所をどこにするのかも予測して、床のリフォームを行うときに壁の準備をしておくと、将来「ここに手すりをつけられるよう、空間を開けておきました」と言って、すぐに施工をお願いすることができます。
ご予算のこともありますから一概には言えませんが、リフォームは、部分的にちょこちょこと何度も行う方が、時間や手間、予算が余計にかかります。
例えばトイレの床だけを張替えた場合、数年後に劣化したトイレの水漏れで新しい床がダメになるかもしれません。その場合、トイレそのものの交換と再び床の張替えをしなければならなくなってしまいます。
介護のことを考えて、タンクレストイレに変えておくというのも良い選択です。
手すりは左右両側の下地を準備
立ち上がりや歩行が辛くなったら、玄関・トイレ・廊下・階段など、家の要所に手すりを取り付けて転倒を防くのが一般的です。
ここで気を付けていただきたいのが、手すりはなるべく左右両方につけられるように考えておく、ということです。
体力が落ちたとき、右手と左手のどちらが手すりを持ちやすい状態になっているかは、事前に予測ができません。
実際に「利き腕が右だから」と右側だけに設置したものの、ご病気により左手で体を支える必要が生じ、追加工事をお引き受けしたケースもありました。
手すりの工事は、壁の内側を補強する必要があるため、片側ずつ2度に分けて行うと工事費用も2回分かかります。
今すぐ手すりが必要でなくても、「将来、壁に手すりをつけられるようにしておきたい」とご要望をいただければ、全体のリフォームに補強工事だけを組み込むことができ、費用も抑えられます。
まとめて行う方が負担を減らせる
ご予算のこともありますから一概には言えませんが、リフォームは部分的に何度も繰り返す方が、時間も手間も予算も余計にかかります。
たとえばトイレの床だけを張り替えた場合、数年後に劣化した便器からの水漏れで、新しい床がダメになってしまうかもしれません。
その場合、便器そのものの交換と床の再張り替えを両方行うことになります。
将来の介護を見据えて、お手入れのしやすいタンクレストイレに替えておく、といった選択も含め、少し先を見た計画を立てることをおすすめします。
まとめ
老化にともなう身体の変化は、誰にでも訪れます。
だからこそ、段差解消をはじめとするバリアフリーリフォームは、「困ってから」ではなく「気になり始めた今」がご検討のタイミングです。
• 危険なのは大きな段差より、敷居や畳の縁などの小さな段差
• トイレの段差解消はドアの開き方・アクセサリーの高さまで含めて計画する
• 手すりは両側に取り付けられるよう、下地だけでも先に準備しておく
• 介助が必要になった時のスペースを想定しておく
段差のないフラットな住まいは、ご本人の安全を守るだけでなく、ご家族の介護の負担も大きく軽減します。
そして何より、これから先の暮らしへの不安をやわらげてくれるはずです。
文: 伊藤・鹿毛







