【 造作家具(オーダー家具) 】キッチン収納・クローゼット編
本コラムでは、自身のこだわりを詰め込むことのできる世界に一つしかない家具である造作家具(オーダー家具)を製作した事例をご紹介します。
■紹介事例
・「 キッチン収納(キャビネット)」の造作家具 2件
・「 キッチンカウンター 」の造作(家具)
・寝室に設置した「 クローゼット 」の造作家具
キッチン収納の造作家具①
制作したのは「据え置き型」のキッチンキャビネットです。こちらでは、打ち合わせから設置までのプロセスをご紹介します。
前回のキッチンリフォームから15年以上経って家具が古くなり、また使い勝手にも変化が出てきたそうです。最近は「トールキャビネットの上の段が使いづらくなってきた」とお客さまからお聞きしました。
そこで、今の暮らしにあわせたキャビネットを造作することになりました。
今回、新しく製作したものはこちらです。
打合せ・提案
打ち合わせは、造作家具工事で一番大切な部分です。デザイン・色・高さ・奥行き・どこに何をどのように収納するかなど、図面を基に何度も打ち合わせを重ね、細部まで決めていくことが大切です。
こちらが最終提案の図面になります。
仕様をしっかり決めたのちに家具の製作へうつります。造作家具は工場で高い精度で図面通りに作られ、更に現場搬入後に家具職人が微調整を行い仕上げていきます。
設置・工事
家具製作が終わると設置の為の工事に移ります。造作家具の設置工事の大まかな流れは、養生・旧キャビネットの解体撤去・壁下地の補修・内装工事・家具の搬入・据え置きと進みます。
それでは順を追って実際の様子を見てみましょう。
設置前の古いキャビネット(この収納は壁に固定されていました)
養生
工事中に誤って周りを傷つけてしまわないように保護する作業です。
自分たちが歩くところも汚れ防止のために床に養生材を敷き、さらに既存の設備への傷を防止や、工事を行わない箇所に埃がかからないよう、リビングへ埃が飛散しないようにビニールのカーテンを垂らします。
マンションなどの現場では共用部分も必要に応じて養生を行います。
家具解体・撤去
設置前の古いキャビネットを手作業で、解体・撤去をしていきます。
撤去後、入口の枠のトール収納に隠れていた部分に塗装されていない箇所が見つかりました。
新しい家具は下台のみなので、家具を設置した後に塗装されていない部分が見えてしまいます。
このような場合は、まずはお客さまに状況をご報告し、どのように進めるのが最善かをご提案します。
予定外の事象が発生した場合は、常にご報告・相談の上、工事を進めます。
相談の結果、枠は後日塗装することになりました。
解体・撤去が終わったら内装工事の職人さんに交代し、交代のタイミングで一旦掃除をします。
内装工事(下地補修工事含む)
収納で隠れていた部分とそれ以外の壁紙の色が異なっています。
これは、家具で隠れていた部分が日焼けなどによる劣化が少ないためです。
また、収納があった部分には巾木がありません。新しいキャビネットは既存のものより小さくなるため、巾木がない部分が見えてしまいます。そのためクロスと一緒に巾木の貼り替えも行います。
まずは、古い壁紙を剥がし、新しい壁紙を貼るために壁の下地処理をします。
小さな凸凹も許しません!
※下地処理・・・新しい壁紙をきれいに貼り上げるために、壁の表面を滑らかに整える作業。
【 壁紙をはがす ➡ 下地処理 】
【 きれいに仕上がりました 】
内装工事が終了したら、再度掃除を行います。
家具搬入・据え置き
傷がつかないよう新しい造作家具を慎重に運びます。
キッチンに到着。この時、まだ天板と側面の板は取り付けられていません。
ここからの作業が造作家具と既製品との大きな違いの一つです。
入口の枠の出っ張りに天板がピッタリ合うように、家具職人によって細かく調整していきます。
少しずつ天板を削り、調整を繰り返します。
ピッタリはまりました!
こちらが設置後の様子です。
新しい家具をご覧になったお客さまから、「リビングの家具と色が統一されたのでとてもよくなった」「思い通りに出来上がったので満足です」とお言葉をいただきました。
キッチン収納の造作家具②
キッチンリフォームは「デザイン・使い勝手・収納力・居心地の良さ」など、様々なアプローチでプランを検討する必要があります。
今回のお客さまとはキッチン本体はもちろんのこと、収納についても色々なお話をさせていただき、収納力や使い勝手を重視して収納を造作家具としてご提案をすることになりました。
キッチンをメーカーの物でリフォームする場合、収納も同じメーカーで作ることが多いのですが、今回造作家具となった理由は以下の通りです。
・収納を設置する場所の固定方法がメーカー製品では難しかった
・収納物がきちんと納まるように高さや幅までサイズを検討した
・調味料や根菜類の収納場所やサイズを考えてプランした
・ゴミ箱の置き場所も限定されるため収納の中に納める必要があった
出来上がったプランはこちらです。
そして無事に設置された家具はこちらです。
キッチンと向かい合う配置のため、違和感のないホワイトの面材でご提案しています。上部の扉の中に食器を入れるのですが、食器の仮置きができるように引き出し式の棚もつけました。
物の置き場所も考えてプランしたため、リフォーム後に食器や調味料を戻す作業もスムーズに出来たとお客さまには言っていただきました。
キッチンや造作家具のプラン検討は、お客さまの動作や意向をくみ取り、また現場の条件などを考慮しなくてはならず、いつも難しいと感じながらプランニングしていますが、同時にとても楽しい時間でもあります。
キッチンカウンターの造作
お客さまとの打合せでキッチンカウンターを造作することになりました。
収納したいもの、食器のサイズ等をヒアリングし、お客さまから伺った内容を形にするために家具屋さんとの打合せでパースを描いてもらいました。
カウンター部分はステンレスです。引出しは食器棚となっていて、サイズは食器のサイズに合うように設計しました。
また、引出し側と反対側はお客さのリクエストにより引戸になっております。
リフォーム後の写真です。
食器を片付けるのが楽しくなる感じがして素敵に仕上がりました。
クローゼットの造作家具
住まいのお困り事といえば、必ずといって良いほどランキング上位にくるのが、『収納が足りない』ではないでしょうか。
日用品や衣類などの行き場がなく、そこかしこに溢れてしまい、生活感が隠し切れない・・・というのはよくある話です。
こちらのお客さまからご依頼のきっかけは、
・息子様の趣味の道具が納戸に溢れてしまっている
・家に遊びに来るお孫様の安全を考えると余計な物は片づけたい
このようなお話から収納について見直したいとのことでした。
まずは不要なものの断捨離から始め、それからお部屋に壁面収納を設置して一気に片付けるご提案をしました。
何度目かのお打合せの中で、どうせやるなら “ やはり納期はかかって良いモノ ” を置きたいと仰っていただき、特注で造作壁面収納を作る運びになりました。
実際に納めさせていただいた家具がこちらです。
お客さまのお好みに合わせて製作した、框組の扉に7分艶の淡いブルーの塗装がとても品良く仕上がりました。
組み合わせた真鍮の取っ手がフレンチスタイル家具のようで素敵ですね!
さらに、是非見てほしいこだわりが2箇所。
1つ目は、扉内の最上段・最下段・中段の3枚の固定棚の形状が特徴的だと思いませんか?
実はこれ、空気を取り込むための加工で、収納内部に湿気がこもりやすくなるのを防ぐためにあえてこの形にしました。ルーバー扉にすることも当然可能ですが、框組の扉を採用する都合でこのような加工をしております。
2つ目が、このコンセントです!
壁面一杯に家具を据えてしまうと、隠れて使えなくなってしまうコンセントが出来てしまい、家具の台輪部分に新たにコンセントを設けることで、不足分の解消をしております。
こんなこだわりが実現できるのも特注ならではですね!
最後に
造作家具はコスト面で割高になりやすい傾向がありますが、使い勝手や収納方法を重視し、ご自宅にマッチするものをご提供することができます。
収納にこだわりたい・・・、なかなか思うような収納が探せない・・・と思っていらっしゃる方は造作家具をご検討されてはいかがでしょうか。
文: 栗原・南部